7-4. 主な選択マーカー
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1) 抗生物質に対する耐性遺伝子:薬剤耐性遺伝子
薬剤耐性遺伝子
最も一般的なマーカーで、大腸菌では主にアンピシリン耐性遺伝子が用いられるが、それ以外にもテトラサイクリン、カナマイシン、ストレプトマイシン耐性遺伝子など、種類は多い
ベクターを細菌に導入後、抗生物質の入った培地でクローンを選択する
例えば、pBR322プラスミドベクターは2種類の耐性マーカーをもつが、DNAが挿入されたベクターをもつ大腸菌は次のような方法で選択する
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薬剤を用いたpBR322ベクターでの二重選択法の例
原理
pBR322はアンピシリン耐性遺伝子(Ampr)とテトラサイクリン耐性遺伝子(Tcr)をもつ
DNAがTcr内に挿入されるとTcrが破壊され、目的クローンはアンピシリン(Amp)のみに耐性となる
操作の概要
pBR322のTcr内にあるBamH I認識部位にDNA断片を組込む
BamHIのほかEcoRV、SalIなども使われる
反応後の試料を大腸菌に導入し、Amp入りプレートに播く
インサートが挿入しない元のベクターも相当の割合で含まれる
生えてきたコロニーを、別々にTc入プレートに植える
Amprは無傷なため、ベクターが入った細胞はすべて生える
そこで増殖しない大腸菌クローンに、目的DNAが含まれる
インサート挿入ベクターをもつクローンはTcrが破壊されているので、Tcプレートには生えない
両方の薬剤に耐性の細胞はもともとの構造のベクターをもつ
memo: レプリカプレート
プレートに出現した全コロニーをスタンプで写し取り、そのスタンプを押しつけて植菌したものをレプリカプレートという
一度に多数のコロニーを植え替えでき、同様のプレートを複数枚つくることができる
2) lacZ遺伝子と青白選択
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青白選択
カラー選択あるいはブルーホワイトセレクションともいう
大腸菌のlacオペロンのプロモーターとオペレーター(lacPO)と下流のβ-ガラクトシダーゼ(β-gal α断片)をコードするlacZ遺伝子のまとまり「lacPOZ」がカセット(1つの単位)としてベクターに組込まれているものを使う
lacZの転写はlacI遺伝子がつくるリプレッサーで抑制されているが、誘導物質のIPTG(イソプロピル-β-チオガラクトピラノシド)を添加すると、IPTGがリプレッサーに結合してそれを不活化するため、lacZ遺伝子が働けるようになる
ベクターがβ-gal α断片の欠損細胞に導入すると細胞はlacZ-からlacZ+に変わるので、β-galの基質である無色のX-gal(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-ガラクトピラノシド)を加えると、それが加水分解されて青色の物質に変化する
青白選択によるインサートをもつクローンの選択
原理(プラスミドの場合)
lacPOZカセットのlacZのN末端にはMCSがあるため、この部位でのDNA組込みはlacZの挿入失活を招く
このため青白選択で白いコロニーとなり、元のベクターをもつ青色コロニーと区別することができる
操作の概念
AmprとlacPOZカセットをもつプラスミドベクター(pUC系, Pbluescript系など)のlacZ内のMCSに、目的DNAを挿入する
ライゲーション反応後のDNAをlacZ-の大腸菌(JM109, DH5αなどのlacZ-でrecA-菌)に導入する。プレートにIPTG, X-gal, Ampを加えて培養する
青と白のコロニーが出るので、白色コロニーの菌を選択する
インサート配列がB-galと融合タンパク質をつくり、インサートが入っても青色に呈色する場合がある
翻訳の読み枠が合って、ある程度の酵素活性が出る場合
目的プラスミドをもっていることを適当な方法で確認する
PCRや制限酵素切断、ありはDNAシークエンスで確認できる
memo: β-gal活性のα相補
β-galのα補正
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β-galは四量体となって活性を発揮するが、遺伝子は大きすぎてそのままではベクターに組込まない
そこでN末端の146アミノ酸部分(α断片)を組込み、それをα領域が欠損したC末端領域(ω断片)発現細胞内で発現させる
α断片自身は機能を持たないが、細胞内でω断片との間で四量体複合体が形成され、酵素活性が出る
ω断片断片遺伝子は通常F因子に組込まれているものを使う
e.g. F' lacZΔM15菌
3) 致死マーカー
大腸菌の致死マーカーとしては、原核細胞で致死的なGATA転写制御因子や、DNA結合性を高めて致死性にしたCAPなどのDNA結合タンパク質の遺伝子がある
致死マーカーをもつベクターを致死ベクターという
memo: DNA結合性を利用した致死ベクター
pGATAベクターはあるタンパク質と融合する形の毒性ペプチド(転写制御因子のGATA-1. 大腸菌ゲノムの複製起点に結合して増殖を阻止する)遺伝子をもち、その発現はIPTG誘導性のtacプロモーター制御下にある
ベクターにはほかにlacIq($ lacI^q)もあり、それによって非誘導時は毒性ペプチドの発現は厳密に抑えられている
IPTGを加えるとそのままのベクターをもつ細胞は毒性タンパク質が発現して死ぬが、融合タンパク質の直下にDNAが入って挿入破壊が起こるとGATA-1ができず、そのクローンは生存できる
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